次に逢えたら

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 良く晴れた日には夫婦二人でゆっくりと公園に向かうのが私と妻の日課だった。長い夫婦生活を続け、年をとってからはそうして過ごすようになっていた。 「うぅ、今日は寒いわね」  玄関で靴を履きながら、妻が震えて上着をかき寄せた。 「もっと厚着をすれば良かっただろう」 「こんなに寒くなるなんて思わなかったわ」  鞄から大判のマフラーを取り出して巻きつける。 「公園まで歩けば体も温まる。さあ、行こう」  犬を連れている人や駆け抜ける子供たち、道行く人々とにこやかに挨拶を交わしながら妻は歩く。十五分ほどで目的の公園に着き、「いつもの場所」と定めている日当たりのいいベンチに腰かけた。 「ベンチが空いていて良かったわ」 「このベンチは日当たりが良くて暖かいからな。私もここが好きだ」  妻はいそいそと水筒に入れてきたほうじ茶をカップに注いだ。それを置いて冷めるのを待つ。 「まだ熱くて飲めないわね」 「もう少し冷ましてから淹れてくれば良かっただろう」  前にもそう言ったことがあったのだが、「熱いのを淹れて、そこから湯気が立ち上るのを見ているのが好きなんだもの」と反論されてしまった。寒い日に湯気を見ていると幸せな気持ちになれるのだと言う。  公園の遊具で遊ぶ子供たちの様子をしばらく眺めて、「そろそろ冷めたかしら」と傍らに置いていたほうじ茶をすすった。美味しい、と微笑む横顔に私もつられて微笑んでいた。  おもむろに鞄から毛糸を取りだすと、妻の瞳が俄かに真剣なものになった。孫のマフラーを編むつもりなのだ。最近公園デビューを果たしたという報せを娘から受け、妻は張り切って編み物に力を入れ始めた。「私の大事な孫に風邪をひかせるわけにはいかないわ!」と娘との電話口で拳まで握りしめそうな勢いだった。 「今年は、私のマフラーは無いのだろうか」  問いかけてみる。きっとないのだろうな、と思いながら。去年までは編んでくれたのになぁ、と妻の傍らにありながら拭い去ることのできない寂しさに包まれる。
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