異なるい

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 今度はわたしが、先輩からマフラーを引きはがそうと身体を起こして駆け寄った。けれど、わたしから遠ざかるように、マフラーは窓際へ向かって先輩をずるずると引きずっていく。  そして勝手に窓が開くと、一気に先輩を外へ引っ張り落そうとした。  わたしは必死に先輩の身体に飛びつく。  先輩の首から髪を引き千切ろうと、指を首と髪の隙間に突っ込んだ。 「先輩! 負けないで!」  半分身体が窓の外へ乗りだした状態だ。  目の端に、地上が見える。  その地上から長い黒髪の少女が、わたしと先輩を見上げていた。  なぜか、はっきりと少女の表情がわかる。  人形のように整った顔で眼を大きく見開き、赤い唇を歪めて笑っていた。  先輩を助けようとするわたしへの憎悪だ。  でも、負けられない!  わたしは思い切り叫んだ。 「先輩のことが大好きなら、自分の分まで生きて幸せになってって願うのが、本当の愛情じゃないんですか?!」  その瞬間。  先輩の首に絡まっていた彼女の髪が、力尽きたように千切れた。
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