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そして、寒い冬がやってきた。
生徒はみな、高校指定の黒いダッフルコートを着る。手袋とマフラーは自由で、そのあたりで可愛さや色合いでおしゃれができた。
そんな中、登校時に見かけた結城先輩は、黒いマフラーをしてきていた。
朝から先輩の姿を見ることができて気をよくしたわたしは、春奈ちゃんを突っつき、耳もとでささやく。
「黒いマフラーだなんて、あんまり似合っていない気がするよね。結城先輩なら、爽やかな青か、白いマフラーが似合いそうなのに……」
「男子は黒でもカッコイイと思うけれど。たしかに結城先輩のガラじゃないかな」
「ねえ」
その日の昼休み。
春奈ちゃんがわたしのために、上級生から情報を仕入れてきた。
「あの黒いマフラー。どうやら亡くなった彼女の手編みで、彼女からの最後のプレゼントだったみたいよ」
「そうなんだ……」
大きな意味を持ったマフラーで、わたしは驚く。
そして、やっぱり結城先輩は、彼女のことが忘れられないんだと、わたしは落ちこんだ。
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