49人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなわたしに、春奈ちゃんは言葉を続ける。
「彼女の手編みの、あのマフラーをしていたら、もう誰も先輩に近づけない雰囲気がするよね。嫉妬深い彼女の呪いがありそうで」
本当にそうだと、わたしも思った。
結城先輩がそれでよいのであれば、まったく先輩に近寄る勇気のないわたしが、どうこう言える立場ではない。
しんみりしたわたしに、春奈ちゃんが心配そうな顔をする。
「前にも言ったかもしれないけれど。結城先輩、去年は冬に一気に弱まったって。彼女が亡くなった季節になったからか。もしくは、本当に彼女が結城先輩を呼んでいるんじゃないかって」
「そんな……」
「だから、今年の冬が峠じゃないか――なんて噂もされているみたい」
そんな話を聞いたわたしは、いてもたってもいられなくなる。
でも、どうしようもないじゃない?
受験時期の三年生は、三学期はほとんど登校してこない。
姿を見られるのは、あとわずかだ……。
最初のコメントを投稿しよう!