異なるい

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 その日の放課後、いつしかわたしの足は、校舎の四階にある自習室へ向かっていた。四階の一番端は空き教室で、普段から自習室として開放されている。  結城先輩も生徒会を引退してからは、放課後に時々、残って勉強をしていたのを噂で聞いていたのだ。  自習室の前で立ち止まり、そっとのぞいてみる。  だが、その日は誰もいなかった。  ――そうだよね。たまたま結城先輩がいるなんて、そんな偶然、あるわけないよね。  そう思ったとき、気がついた。  窓際の机の上に、黒いマフラーが置かれている。  あれって、結城先輩のマフラーではなかろうか?  引き寄せられるように、わたしはマフラーへ近づく。 「やっぱりそうだ。先輩、忘れて帰ったのかな? それとも、教室に戻ってくる、の、か……」  わたしの言葉が、かすれるように途切れる。  近くで見て、気がついた。  この黒いマフラーは、あたたかそうな黒い毛糸で編まれたものに、同色の糸が混ぜられている……?  これって、絹糸のような――髪?  長い髪の毛?  顔が強張り、一歩、後ろへさがった瞬間。  その黒いマフラーは、机の上で身を縮め、ゴムのように跳ねた。  跳ね飛んだマフラーは意思を持って、わたしの顔に張り付いた。
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