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わたしは悲鳴をあげて、尻餅をついた。
そんなわたしの顔面を覆うと、マフラーの髪がバラけながら、うねうねと小さな触手を伸ばすように口の中へ侵入してくる。
そのまま仰向けに倒れたわたしの喉の奥が、どんどん髪で詰まっていく。
息ができない。
身体の内側から苦しさがこみあげる。
手が空を掻く。
耳もとで心臓の音がどくどくと響く。
知らずに涙が溢れる。
「やめるんだ!」
その声とともに、わたしの口から髪が引き抜かれた。
一気に咳こみながら、わたしは上半身をひねって、両手を床につく。
――いまの声、結城先輩!
息も絶え絶えに見上げると、目の前で、黒いマフラーを巻いた先輩が立っていた。先輩の整った顔が、苦痛に歪む。
「せんぱ、い、」
――違う!
結城先輩は、マフラーに首を絞めあげられているんだ!
「先輩!」
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