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目が覚めたら、白いパイを頭からかぶっていた。
二日酔いのせいで幻覚でも見ているのかと思った。昨夜は久しぶりに酒を飲み過ぎたのだ。
いや、幻覚にしてはおかしい。生クリームの甘さの中に、レモンの酸味を感じるのだ。しっかり時間をかけて丁寧に作られたクリームパイだ。どうやら幻覚ではないらしい。これが幻ではないとすると、どうして鼻の穴に入るほどのパイをかぶっているのだろう。
目の前にはモノトーンチェックの布団、ミステリー小説が並んだ本棚、年代物のテレビ。代わり映えしない見慣れた僕の部屋。その中で僕だけがパイまみれ。
昨夜パイをかぶるような重大な事件が起きたということか?
僕は洗面所に向かいながら、二日酔いで途切れ途切れになっている昨日の出来事を思い起こしてみた。
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