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はみでた肩の寒さに起こされて、あたしは見えない室温を睨みつけて、ブツブツ言いながら身を起こす。
シンと静まり返っていた夜の音に、開けなくても分かる外の様子に窓に手を掛ける。
(なんで雪国なんかに産まれちゃったんだろう……)
言ってもしょうがない愚痴が口をついて出る。
勤務先まで車で1時間以上の父の起床は早い。
まだ布団に潜り込んでいるあたしの耳に、車庫前の雪をどけるスノーダンプの音が聞こえてきてはいたが、(どうせあたしが出掛けるまでにはまた積もっちゃうんだし)と起きない。
夜間に外の音がしないのは、降りしきる雪が音を吸い込んでしまうからだ。
まだ薄暗い外の気配にそっと音をたてないように窓を開ける。
案の定、薄明かりの下でうごめく背中が見える。
手早くパジャマを脱ぐとセーターに潜ってスノーパンツをはく。
(どうせ汗かくから、スカートは後……)
いそいそと階段を降りれば、起きたばかりの母と行き会う。
「毎日雪かきありがとうね~」
寝ぼけまなこの母を一瞥して長靴に足を突っ込む。
下駄箱の上の、ゴツイ手袋に両手を通してあたしは臨戦態勢をとる。
内戸を開けて風除室に立てかけてあるスコップを掴む。
勢いよく外戸を開けて向かいの幼馴染に挨拶する。
「おはよう!今日も真っ白だね!」
まだ雪かきも始めていないのに、何故かあたしの頬は熱い。
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