彼女は拗らせ女神?OR変質者?

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 農園の手伝いを終え、気分転換に屋敷の外へ出てみたシャルロット。  幻狼エステルとスノウ、グレイも一緒だった。 「姫様〜!」  門の外へ出ると、騎士キャロルが慌ててすっ飛んできた。 「キャロルさん?護衛はいらないわ。屋敷の周りを一周するだけよ」 「護衛は私の仕事です!!」  キャロルに強く押されて、一緒に外周を回ることにした。  門から、そう遠くない場所には霊園があった。  柵の外側を歩きながら中を覗き込むと、小さな墓がたくさん並んでいる。  墓を取り囲むようにヘーゼルナッツの木が生えていたーー。 「ベンジーが言ってたわ、ヘーゼルナッツの木ってお墓を落雷から守るんですって」  昔、新大陸に移住したペレー国の人たちが植えたらしい。 「へえ、そうなんですね。うちにはない風習ですよね」 「クライシア大国へ帰ったら、お城にも植えてみたいわ」  談笑しながら歩いていると、前から見知らぬ強面の男達がやって来た。  トレンチコートを羽織り、キョロキョロと辺りを見渡している。  内一人は警察官のようだ。 「こんにちは」 「ーー」  シャルロットが声を掛けると、男達が一斉に振り向いた。  (ち……チンピラみたいな風貌だけど、おまわりさんよね?)  ギロッと鋭い目で睨まれてビックリするシャルロットの前に、騎士キャロルが出た。  男達はどうも、シャルロット達の背後にいるオオカミ3匹に警戒しているようだった。  (ああ、そうか、精霊を見慣れていないんだわ) 「この方は、クライシア大国のシャルロット妃殿下です。私は親衛隊のキャロル・マークです」 「貴女が……。失礼しました、妃殿下」 「ビックリさせて、こちらこそ申し訳ございません。このオオカミ達は精霊ですわ」 「精霊……?」  幻狼エステルは警官の前までゆっくり近付いてくると、楽しげに笑いながら人間の姿に化けた。  変身を目の当たりににして男達は声を上げて驚いた。 「ギャア!狼男か!?」 「違うよ〜!僕はエステル、幻狼だよ?」  精霊の概念がないと、何でもゴーストやモンスターに見えるんだろうか…。 「あの…、ここで何をなさっているの?何か事件でも?」 「ああ…、最近この辺りで墓荒らしが多発しており。夜道を歩いていた若い女性が何者かに襲われる事件も3件発生している。村で聞き込みをしたところ、この辺に住んでいるデュラハンという騎士の仕業ではないかと、住人らが口を揃えて言うので、調べに来たんです」 「デュラハン?…ま、まさか!彼が、そんなことするわけないわ!」 「そうですよ。私達、今、そのデュラハンの農園に滞在しているんです。国や知事にも、滞在の許可は事前にいただいております。そんな危険人物の元へ他国の王族を泊めるわけないでしょう?」 「だが……」  まだデュラハンを疑っているような顔をする男達に向かって、エステルは叫んだ。 「デュラハンは僕とおんなじ精霊なの!精霊はそんなこと絶対しないもん!そんじゃあ、僕達が墓荒らしの犯人を捕まえるよ!ねえ、ママ」 「そうね!エステル。真犯人を捕まえて、デュラハンの仕業じゃないって、村のみんなの誤解を解いてあげましょう?」
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