かまくらで

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「お前……、本当にタケル?」  棺桶に気をとられていると、母親が恐る恐る近付いてきた。 「あ? なに言ってんの母さん。俺に決まってんじゃん」 「でも、死んだんじゃ……」 「いや、死んでないって! 実際生きてるでしょ!」  そうは言ってみたものの、母親はまだ半信半疑のようだ。  すると今度は、父親がやって来た。 「父さんたちな。お前が雪山で遭難したって聞いたんだ。発見された時、確かに心臓が止まってたって……」 「んなこと言われても、俺生きてるし……。確かに雪山に行った覚えはあるけど……」  どうやら父親が言ったことは本当らしく、雪山で行方不明になり二日後に発見されたらしい。でも…… 「遭難っていうか、作ったかまくらで昼寝した記憶しかないけど?」 「かまくら?」 「あー!」  友人達が一斉に声をあげる。 「お前、やっぱり!」 「あん?」 「『あん?』じゃ、ねーよ!」 「あれだけ、外で寝るなって言っただろ!」 「あの後猛吹雪になって、みんなロッジに避難したんだ」 「お前だけいねーから、心配したんだぞ!」 「わ、悪かったよ……」  友人達のあまりの剣幕に、俺は平謝りしたのだった。  「念のため」と病院で精密検査を受けたものの、まったくの異常無し。  医者達も信じられない様子だった。  SFオタクのやつが言うには「冷凍保存された状態だったんだよ」、らしい。  まあ、とにもかくにも、冬に外で寝るのは危険だってことだな。 ◆◆◆おわり◆◆◆
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