第3章 弔い

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 順慶が味方してくれる事を期待して筒井軍を待っていたが、それを袖にして順慶は姿を見せなかった。  洞が峠には行かずとも、順慶が『洞が峠を決め込んだ』のは事実である。    ここまでくると、秀吉、光秀のどちらが順慶にとって本命であったかが透けて見えてくる。  秀吉軍を実は待ちながら、光秀に対して何時までも曖昧な態度を取り続け、いざという時によりを戻せるようにしておく。  まるで悪女の如き身の処し方である。  今を生き抜く為には後世まで英雄として名を残す必要などない。  己と己の大事な家臣、家族、領地を本気で守り抜こうと思ったら、見苦しくとも名誉など求めるべきではない。  順慶は心の内側での戦で疲弊し、またもや胃痛で苦しんでいた。  
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