第4章 清洲会議

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 月読丸を忍びとしたのは、生かす道がそれしか無かったからだ。  松永の元に断腸の思いで送り込んだのも、彼を生かす為だった。  恬淡として私情を切り離すべき忍びに対する狂おしい恋情。  家臣達が眉を潜めたのは非難ばかりではなく、順慶の身を案じての事だ。  松永滅亡後、月読丸を失う事を恐れる余り、忍び働きの為に側を離れる彼の袖を常に引かずにはいられなくなってしまった。  他に忍びはいる。  敢えて月読丸である必要は無い。  しかしそれは、己一人の愛の対象として彼を扱う事であり、己の死後、彼が生きて行く道を断ってしまう事だ。  例え命の危険があろうとも、愛故に命じるしかないのだ。
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