第2章 曼殊沙華

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第2章 曼殊沙華

   髪はざんばら、括りもせず顔に縺れ背中にも垂れている。  顔も手足も薄汚れているが、良く良く見れば雛にも稀な美しい少年の手には、真っ赤な曼殊沙華が握られていた。 「おと……」 「けえって来たけ。三郎。」  馬小屋のような家の中に寝そべっていた男が、戸口に立つ少年の声で顔を振り向けた。 「何や、それは?」  男は少年と似たような艶の無い薄汚い髪を束ね、無精髭を生やし、充血した目で三郎と呼んだ少年を睨み付けた。 「ぼんばな……おとに(曼殊沙華、お父さんに)」  
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