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次の日の朝、織田さんに会いたくなくて、俺は母さんに頼み込んで、車で学校まで送ってもらった。
頑張って授業を受けたけど、やはり途中で気持ち悪くなって、早退する羽目になった。
昨日一日中寝ていたにもかかわらず、身体は濡れた毛布に包まれてるように重くて、寒かった。
風が吹くと、更に凍える。
長谷川マサルのマフラーは、玄関に置かれたままだった。
織田さんは俺を恨んでいたのか。マサルを殺したと、怒っていたのか。
俺を、殺したいと、思っているのか。
倒れそうになるギリギリの精神状態で、角を曲がる。家まであと数十メートルで着くという所で、向かいのアパートの二階から、人が降りてきた。
「寒そうねぇ。マサルのマフラー着けてないじゃない」
ごめんなさい。口を動かしたつもりだったけど、俺は上手く言えただろうか。
掠れた視界の中に、シワの刻まれた両手が見える。
ごめんなさい。
その手は、ゆっくりと、俺の首元に伸ばされていく。
ごめんなさい。
「……おかえり、まぁ君」
終
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