見えない悪意

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 *  その後の授業は、全く頭に入らなかった。  大輝が教えてくれたのは、五年生の時に死んだ長谷川マサルが、このマフラーを使っていたという事。  何故マサルのだと分かったのかというと、それはてんとう虫の刺繍。その部分に誤って穴を開けた張本人が、他でもない大輝だったからだ。  お気に入りのマフラーに穴を開けられてしまって、当時のマサルは泣いた。お母さんがせっかく作ってくれたのに、と。しかし数日して、その穴はてんとう虫の刺繍で繕われた。マフラーは、さらにマサルのお気に入りとなって、大輝に自慢げに見せたという。  長谷川マサル。名前だけ聞いてもピンとこなかった。大輝が言うには、四年の時に俺も同じクラスだったらしい。  授業中、俺を気遣って大輝が何度もこちらを見た。きっと青い顔をしていたのかもしれない。  誰だって、青ざめるだろう。  死んだ同級生のマフラーを、何も知らずに毎日巻いていたのだから。
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