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その後の授業は、全く頭に入らなかった。
大輝が教えてくれたのは、五年生の時に死んだ長谷川マサルが、このマフラーを使っていたという事。
何故マサルのだと分かったのかというと、それはてんとう虫の刺繍。その部分に誤って穴を開けた張本人が、他でもない大輝だったからだ。
お気に入りのマフラーに穴を開けられてしまって、当時のマサルは泣いた。お母さんがせっかく作ってくれたのに、と。しかし数日して、その穴はてんとう虫の刺繍で繕われた。マフラーは、さらにマサルのお気に入りとなって、大輝に自慢げに見せたという。
長谷川マサル。名前だけ聞いてもピンとこなかった。大輝が言うには、四年の時に俺も同じクラスだったらしい。
授業中、俺を気遣って大輝が何度もこちらを見た。きっと青い顔をしていたのかもしれない。
誰だって、青ざめるだろう。
死んだ同級生のマフラーを、何も知らずに毎日巻いていたのだから。
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