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聞けば聞くほど、気持ちが悪くなっていった。
母さんが車で迎えに来てくれた頃には、俺は立っているのがやっとだった。
蒼白の俺に気付いた母さんが慌てて駆け寄ってきて、車に乗り込んでから後のことは、一切覚えていない。
目が覚めたのは、次の日の昼だった。
母さんが学校に電話して、病欠にしてくれたらしい。職場から一時帰宅した母さんは、手早く俺の昼食を準備してくれた。
「……ねぇ、小学生の時に、長谷川マサルって子が死んじゃったの覚えてる?」
「あー、あったね。事故だったよね。可哀想にって思ったの覚えてるよ」
「その子のさ、母さんてどんな人だったか覚えてる?」
「んー知らない。でもね、その子のお母さんが、うちの子はイジメで死んだって、学校に怒鳴り込んだって話は聞いた事ある。切ないよね。大切な子供が死んじゃって、怒りの矛先をどこかにぶつけたいもんね」
片付けを手早く済ませた母さんは時計を見ると、慌てて職場に戻っていった。
柔らかいうどんをすすりながら、俺の頭の中で、小学校へ怒鳴り込んでいく織田さんが映像化される。
ーーうちの子はイジメで死んだ。
思い出せない長谷川マサル。ひょっとして、学校に向けられていた怒りの矛先は、今、俺に向いているのだろうか。
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