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次の日、仕方なく俺は学校帰りに織田さんのアパートへ寄った。
いつもの如く、アパート前に織田さんが立っていて、いつもの通りに「まぁ君おかえり」という。
アパート二階の、一番右側。ドアの前で振り返って我が家を見ると、リビングのカーテンと玄関が見える。二階の俺の部屋も。
「……おじゃまします」
織田さんの部屋は殺風景だった。
小さな石油ストーブと、小さな座卓。
タンスが一竿と段ボール箱が二つ。
入ってすぐのキッチンのシンクには、一人分の茶碗と箸が洗って伏せてあった。
座ってと促された座布団だけ、妙にフワフワで真新しい。
老人の一人暮らしなんてこんなものなのだろうか。
「まぁ君がここに来てくれるなんて、怪我しちゃったけど良かったわぁ」
何も考えないで言った言葉だろうが、俺には“わざと”という言葉が含まれている気がした。
湯呑み茶碗で出されたのはオレンジジュース。どうぞと勧められても、何となく口にする気になれない。
リュックタイプの学生鞄も下ろさずに、俺は居心地の悪さを全身で表した。そんな俺の様子は全く気にならないのか、テレビのワイドショーを観ながら、へぇ、とか、まぁ大変、とか、織田さんは一人で喋り続けていた。
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