見えない悪意

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*  毎日顔を合わせる事は変わらない。だけど、織田さんの部屋に行かなくなって、俺はだいぶ気持ちが楽になった。  塾の勉強は難しいけど、集中すればいろんな事を忘れられるからありがたい。  織田さんのマフラーだけは、いつも持っていたけれど。  そんなある日、塾に着いて授業のテキストを出そうと、マフラーを何気なく机に置いた時だった。 「……え、お前、マサル……?」  背後から聞こえた声に振り向くと、別の中学の生徒が驚いた顔でマフラーを見ている。若干青ざめたその顔は、なんとなく見覚えがある。 「ひょっとして、伊藤大輝?」  俺の感は当たっていた。大輝は俺の顔を見ると一瞬で笑顔に変わり、「なんだよ、正弘じゃん!」と大袈裟に体当たりをしてきた。    小学校の時、よく遊んでいた男子だった。進学学区が違う為に、隣の中学校へ行った奴だ。  隣が空いてるのを確認して、大輝が俺の隣に座る。二言三言、他愛のない会話をした後に、大輝が「それ、どうしたの」と、マフラーを指さした。 「え? これが何か知ってるの?」 「……ん、いや……」  大輝の表情からするに、決して楽しそうな話じゃ無い。言い淀む大輝に、俺も質問する。 「さっき俺のことマサルって奴と勘違いしてたよな。マサルって誰? そんな奴居たっけ?」  大輝の目がキョロキョロと泳ぎ出す。周りを見渡してから、俺に身体を近づけて、大輝が小声で言った。 「……ほら。五年の時に死んじゃった長谷川マサルだよ」
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