プロローグ

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私と松島さんは、お互い挨拶を交わす程度で、私はその事を段々と気にしなくなっていった。私はSFは書かないが、ロボットメイドとは、こんな感じかな?と笑っていたのだ。 私の歳を言っていなかった。私の歳は30代だ、まだ若い30そこそこだ。結婚はしていない、学生時代の失恋を引き摺っていると言えば、そうなのだろう。 私は女性に対して、ミステリーの対象としてしか興味が湧かないのだ。 売れない作家にしては中々の変人なのだが、それなのに、それゆえに女性の心が分からず、変な事をよく書いてしまう。 私の書く小説は謎解きではなく、推理でも無い。既に犯人の分かっているものが全てだ。私はそこにオリジナリティーを持ちたいのだが、未だこれはと言うものが書けていない。 だから、事件があると取材に行ったりするが、警察はもとより新聞や雑誌などの編集者や記者は、ミステリー作家の私にですら、その内容を新聞で見聞きする以上の事は、教えてくれなかった。 従って私は犯人や被害者の感情と言うものを、推察するしかなかった。又は直接あって取材するしか、なかったのである。 だが被害者は取材に応じてはくれない。 当たり前なのだが、1年、2年と、ほとぼりを冷まして行けば、既に犯罪に対する感情は薄れ。嫌な事だからと忘れようとして、忘れているのだ。 当然、私の取材は納得のゆくものではなかった。では犯人は?となるが。私はこれでも、ビビリだ。刑務所に面会に赴き、何故あんな真似をと聞いたところで、私が知りたい核心には程遠いものしか聞けなかった。 つまり八方塞がりなのである。他の作家はどうやって、この難題をクリアしているのだろうか。私は時々観る、サスペンスドラマやミステリー系映画で納得の行かないものが多々あることに気が付く。 そんな事で、人が人を殺すのか又は事件を起こすのか?私には疑問だった。 それが、私がプロの小説家になれない、原因なのかも知れない。いやプロだった、売れない小説を書く。 プロの作家、それが私の肩書きなのだ。 私の1日は冴えないものだ。 朝、大抵昼近いのだが、起きると、松島さんの作った朝食を食べる。私は比較的貧乏?だったので朝食、昼食には拘らない。 学生上がりで新人賞を取ったので、賞金は殆んど外食に費やしたし、夜遅くまで小説を考えたり読んだり、ドラマや映画を観たりと、朝早く起きる生活をしていなかった。 従って父母が生きていた時以来。私は、まともな朝食と言うものを食べていない。 私は風変わりと言うか変わり者なのか、あの朝の食卓と言うものが何故か、わざとらしく感じていた。 父と母との朝食の時間は別でもよかったのだが。学校の朝は早いので、大抵母と2人で食べていたのを記憶する。 父は朝から米の飯を食うこともあれば、パン食の時もある。私は大抵、パンのトーストとハムエッグとコーヒー又はコーンスープだ。だが、これも3日で飽きる。 朝から色々とメニューを考えるのは、母には負担だろうと、文句は言わなかったが。たまに変わったものをとか、昨日の晩御飯の、おかずの残りを食べたりしたものだ。 従って私は特に松島さんに朝食は必ず、とは言った事が無かったが。ハムエッグとコーヒーと一言、言ったので。コーヒーとハムエッグだけは常に出てきた。 当然いつ起きるか分からない私の朝食は、冷めていて。松島さんがキッチンにいれば、温めてくれるが。他の仕事もあるだろうにと、私は構わないで良いよと、自分で温めたり、又は冷めたまま食べたりしていた。 不思議なのはサラダが必ずある事で、私はサラダなど夕飯か外食以外で食べた事がなかった。しかし、彼女の選ぶ野菜とドレッシングの、マッチングは絶妙で私の楽しみの、1つになっていた。
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