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「綺麗すぎて声も出ないって感じですね。」
担当プランナーさんはクスクスと笑い、もうしばらくお二人で待機していてくださいと言い残して、部屋を出ていった。
無言で見つめ合う俺と俺。
「……何が……どうなってるの?」
小さく呟く俺。
うん。
声はこんなんだよな、俺。
でも口調はどう考えても……。
「美結……だよな?」
俺の言葉に目の前の俺が目を見開く。
「わかってくれるの? ……良太郎なの?」
俺の……あっちの俺の目が潤む。
「うわー、やめてくれ。俺の姿で泣くな!」
慌てた俺の言葉に俺の姿の美結が吹き出す。
美結の笑顔やその時の仕草がめちゃくちゃ好きなんだけど……目の前の美結は俺……なんだよな……。
「何なんだろ。この状況。」
独りごちる。
中身が入れ替わるってさ、ドラマかよ、映画かよ、アニメかよ。
大ヒットしたアニメ映画があったよな。
でも現実に起こってたまるかよ。
「何でこんなことになっちゃってるんだろうね。
……どうしたらいいんだろうね。」
不安げに呟く俺……もとい美結。
あーややこしい。
美結が不安な時には、すぐにでも救い出してやりたいのに。
守ってやるからって自分で宣言しておいて、結婚を承諾させといて、何も思いつかない俺が情けねー。
「よくはわからないけどさ、式の時間、迫ってきてる。」
まずは現実を見よう。
俺らはこれから結婚式を挙げるんだ。
ここまで来て引き返せやしない。
乗り切らないといけないだろう。
「そうだよね……。
とにかく今は、式のこと考えないとだよね。」
美結は不安が隠せない。
それでも俺の考えを尊重して応えようとしてくれる。
「大丈夫。
どうしたらいいかはわからないけど、絶対に元に戻る方法見つける。
時間がないから、まずは式優先で。
振る舞いとか言動にお互い気を付けて、堂々とやりきろう。」
俺は俺の肩に両手をガシッと置く。
小柄な美結がデカい俺の肩に手を置くって案外難しい。
それがわかってなのか、美結である俺はすっと目の高さまで身をかがめてくれた。
「わかった。良太郎がいれば大丈夫って知ってるから。」
目の前で俺がやさしく微笑んだ。
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