2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
1.出会い
なんだってんだよ。
そうだ。僕だ。朝倉だ。高一の僕だ。今忙しい。恋で頭がいっぱいだ。それがなんだ。学生は勉強だけやればいい。なんて嘘だ。そう思い返すときはたいてい恋をしているときだ。恋で頭がいっぱいのときだ。テスト前ではっと気づくときだ。
ちなみに言っておくが、僕が言ってる「恋」とは片想いである。そう、片想いしているのだ。クラスメートの女の子に。一目惚れだ。だが、なぜだ。僕はその女の子がかわい過ぎるとはしゃぎながら友達に喋った。友達はまだ見たことない。他クラスだったから知らない人もまだまだいる。だから僕のクラスに連れてきて、「あのあがったポニーテールの。ほら、あの人。なんでわからないんだよ。だからあの、窓側の席で勉強……。そうそう、あの人。な、かわいいだろ?」と好きな女の子を紹介した。僕は友達が宝石を見るような輝いた目に変わるかと思った。が、しかし、友達の反応は僕が予想していたものと正反対だった。
『あの人か。いや、そこまでだろ〜。むしろ俺のクラスのほうがかわいい人いるぜ。』と好きな人のかわいさが全く伝わらなかったようだ。馬鹿な。そんな馬鹿みたいなことあるわけない。どうしてだ?どうしてわからないんだ?ん〜〜〜〜〜?理想が決して高いわけではないのだ友達は。あぁ、なんかショック……。
まぁ、でもいいや。僕だけがかわいいと思うなら学園天国のように席を争うほど、ライバルはいないということだ。なんだ、むしろ良いことじゃないか。やっほーい!!!!!
僕の中のやまびこは大気圏突き抜けるぐらい今なりわたったぞ。うしうしうしうし。しめしめしめしめ。気持ち悪い?それでもいい。もう何言われようと僕の恋は、穏やかな静かな海に浮かぶ船に乗ろうとするところだ。もっとも天候が荒れるか、もしくはそれ以前に船が大破する可能性もある。今のところ順調。告白すれば航路は決まる。確実に。
そうだ。告白すれば航路は決まるのだ。だが、その船は帆も無ければ碇もない。ここまできて非常に言いづらいことがある…………。
実はそのクラスメートの女の子とは一回しかしゃべったことがない。たった一回だ。あちゃ〜。額に手を当て目も当てられない。なにが「順調だ。」だ。わかっていた。こんなん順調といえるわけがない。船すらないわ。うわ〜恋の勉強もまた不足してた。だったら、そうだ。なんとか近づく方法をあみださなくてはならない。さて、どうしよう。いきなり朝教室で「おはよう〜。今日もいい天気で最高だよね。」と言うのはどうか。却下だ。たいそう不自然に思われる。じゃあ〜、これだ。授業が終わって、次の授業までの休憩の間に話しかける。なんて言うか?これだ!!
「あのさー。ちょっといい?えっとー……、消しゴム忘れちゃってさぁ……。2個持ってる?ごめんけど貸してくんない?」
だいぶ良いぞ。僕が暗中模索のなか、なんとか絞り出した一案だ。実に良い。あ、そうそう。消しゴムが2つあることはチェック済みだ。キモい?知るか。恋とはそんなものだ、僕のなかでは。話したことあるっていったけど、昼休み図書室でばったり会って他愛もない会話を交わしただけだ。内容こちら。
「あ、葉月さん。(あえて下の名前で呼ぶ僕)」
【朝倉君。】
と葉月さんは眼を合わせて言い、
【借りに来たの?】
と自然に尋ねた。帰国子女のような訛りだ。
「そう。読みたい本を前に見つけてそれで今日借りにね。(華麗に返す僕)葉月さんはなんで?(馴れ馴れしく訊く僕)」
【え〜っと私は英字の本がないか探しに。】
「エイジ?誰それ?(わからなかった僕)」
【うふふ。英字は英語の文字で英字。人の名前じゃないよ。】
葉月さんは僕のしょうもない間違いに頬を緩めた。なんか笑う顔見れた。ラッキー。
「あぁ〜そっちかあ〜。英語ね。え、葉月さんは英語の本読むの!?(まじで驚く僕)」
【うん、読むよ。近くの古書店で買って訳しながら読んでる。】
「すごいね。英語とか得意なの?(話を広げて会話を続けようとする僕)」
葉月さんは宙を見上げ、ふと思いついたように言った。
【得意というか……。好きかな。】
ドキリ。思わず照れてにやける。あっぶねぇ。見られてなくて良かった〜。あっぶねぇ。てか、唐突の「好きかな。」ってずりーよ。持っていかれかけたわ。セーフ、セーフゥ。僕にも聞いて聞いて。
なんで葉月さんがいいの?
いいっていうか……。好きかな。
キモい?悪いか。うざったいって僕も思う。しゃあーない。なんで?って、それが僕の恋スタイルに違いないからだ。何言ってんだ?僕はネジがとうとう外れたか。いや、もともとだ。うるせぇ。自分で言ってどうする。その後は会話が弾まなく僕はその場をあとにしたけど……。これだけじゃあまだ友達でもないただのクラスメートだ。なんとか友達と恋人の境まではいきたい。やっぱり積極的でないとだめか。よし。決めたぞ。コンコン。朝倉氏の消しゴムの案を採用する。心の中の裁判長だ、気にしないでくれ。よし、採用された。時刻は明日に実行だ。心の中の司令塔だ。気にしないでくれ。
なんだってんだよ。
はじめから話しかけようって決断すればよかったのにダラダラと思ってしまった。こんな男、葉月さんが好むはずない。僕は何してんだ。これじゃあ道端の石ころじゃねぇか。
誰が石ころだー!ころころしてないぞ僕は。
もう、話しかけて話しかけていつか船に乗ってやるぞ。明日だ。有言実行だ。うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!
※朝倉はこれからさらに忙しくなります。
最初のコメントを投稿しよう!