三日目

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三日目

 柔らかに歩み出した二人の関係は急展開をみせる。  秋昴と一緒に楓都たちも結婚式を挙げることになったのだ。  ことの発端は秋昴の婚約パーティーで男性同士の結婚に理解を示す四条辻家に讃する話になった時のことだった。  そこで偉明が「三男の楓都君は運命の番と出逢ったそうだ、四条辻家ならばオメガとの結婚も問題ではありますまい!」と宣ったのだ。  さすがに会場はざわつきを見せ、秋昴もまだ早いと焦りを見せたが四条辻家の当主、秋昴の父親は違った。  これは良い機会だと運命の番の存在を認め、兄弟揃って一緒に式を挙げると声高らかに宣言したのだ。  詰め寄る秋昴と夏惟に父親は「運命の番ならどうしたって離れられんのだろう? なら結婚してしまえばいいじゃないか」と笑った。  こうしてパーティーは秋昴と楓都のダブル婚約を祝う様相になってしまったのだ。 「秋昴様!」  雫は偶然見つけた秋昴に駆け寄る。  パーティーは終了したが極親しい身内で二次会の様な集いはまだ続いていた。そんな中たまたま会場から出て来た主役を呼び止めるなんてあり得ない。だが一大事だ。 「ご主人様が楓都様のご結婚を発表なさったとか」 「そうなんだよ。私も驚いているが良かったじゃないか。心から祝福するよ」 「駄目です! 無理なんです! どうか、どうかなかったことに、撤回なさるように進言してください!」 「そんなに拘らなくてもいいんだよ。いい顔をしない人達もいるかもしれないが楓都が守ってくれる。私達も出来る限り協力しよう」  秋昴は穏やかに微笑んで足早に行ってしまった。  そうじゃない、そうじゃないんです……、と絞り出すように呟いた雫はこのまま逃げ出そうかと真剣に考えた。 「雫さん!」  そこに酔いが回った楓都がやって来て雫をまたも抱きしめる。 「会いたかった!」  明らかに上機嫌で喜びに満ち溢れている楓都。その熱い胸に搔き抱かれては雫に成す術もない。  ここから去らなければという理性は、楓都に溶け込んでしまいたいと疼き出す本能に敵うはずもなかった。  そのまま雫を抱きかかえた楓都は母屋に向かう。 「楓都様、私はまだ仕事が」 「いいんだよ、雫はもう使用人じゃなくて俺の婚約者なんだから!」  自室に入るとお酒のせいか楓都は昨日より躊躇なく雫に触れた。  だが優しさと配慮は感じられ、雫は楓都の自制心を信じて少しだけならとあからさまな抵抗はしなかった。いや、出来なかった。 「香りが濃くなってる。もしかして発情期が近いの?」
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