アンバランス

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 想像しているのだ。  彼女に気付かれないようにそっと手を伸ばし、ゆったりとした結び目を、渾身の力で左右に引っ張る。  涼子も、身に迫る死の恐怖から逃れるために、全力で抵抗する。  だから絶対に手を緩めてはいけない。  綱引きの決勝戦のように、このあとしばらく腕が使い物にならなくてもいいという覚悟で首を絞めるのだ。  涼子が抵抗をやめてぐったりしても、すぐには手を離してはいけない。  息を吹き返す可能性があるからだ。  絶対に生き返らないように、確実に死んでもらうために、5分は頑張りたいところだ。  力なく崩れ落ちた涼子を仰向けにする。  絞殺されたら、どんな死に顔になるのだろう。  涼子の綺麗な顔も、さすがに醜くなるのだろうか。  それとも、美人は特別で、眠る白雪姫みたいな死に顔を残すことが許されているのだろうか。  ――そんなのはズルい。せめて、死ぬ時くらいはブスになってもらわなきゃ。  
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