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涼子の死を、たくさんの人が悼むだろう。
きっと、葬儀では涼子の好きだった歌が歌われ、それを聴いて弔問客が涙する。祭壇の供花は、華やかだった涼子の意思を汲み取って、きっと結婚式のように豪華絢爛に飾られるんだろう。彼女はきっと、葬式ですら、自分のステージにしてしまう。
今井涼子追悼公演なんていうのもあるかもしれない。
うちは小さな劇団だけど、涼子目当ての固定客が、劇団経営を支えていると言っても過言ではない。
死んでなお、きっと涼子はその存在感を世に示し続ける。
――でも、まぁ許す。
死んでしまったら、もう彼女は時を刻むことはできないのだから。
そしたら私が、今まで涼子に奪われてきた何もかもを急いで取り戻す。
彼女がこれから経験するはずだったであろう色んな事を、私が全部代わりにする。
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