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「そう。メンドクセーけどな。送ってやるよ、伸也」 「マジで。サンキュ」 「あ、待って悠基、俺も」  桂が慌てて自分のバッグを手に二人の後を追う。じゃあな、とひらりと手を振って玄関へと消えて行く三人を見送って、光は部屋に残る二人を見た。 「征吾と浩介はどうする?」 「俺はちょっとここで寝てくわ。寝室借りる。征吾は?」  流しで昨夜使ったグラスとシェーカーを洗いながら浩介が言うと、ソファに身体を沈めていた征吾は唸って身体を起こした。 「……俺も寝る。俺はここでいい」  眠気からか不機嫌な声で言う征吾に、光は首を傾げる。 「征吾。もう三日帰ってないだろ。そろそろ親父さんがなんか言って来るんじゃねえの」  やや窘めるような言い様に、征吾がじろりと睨めつけるが、光は動じた様子も無く受け止めた。 「そういや、親父さん、選挙が近いんだよな」  何気なく言った浩介に一瞥をくれて、征吾は派手な舌打ちと共にソファを立ち、苛立った足音を立てて部屋を出て行く。廊下を歩く音が続いた後、がちゃん、と荒々しくドアの閉まる音が響いた。  半ば呆然とそれを見送った浩介は、一つ目を瞬かせてから呟く。 「俺、なんかまずいこと言った? 」  光は浩介をちらりと見て苦笑する。 「気にすんな。浩介は悪くねえよ。なんか、最近イライラしてんだよな、征吾の奴」  しょうがねえな、と溜息をついて、窓の外に目を向けた。  遠いビル群の向こうから、太陽が顔を出し始めている。 「俺も帰るわ。じゃあな、浩介。おやすみ」 「気を付けてなー。おやすみ」  ひらひらと手を振り合い、浩介を残して光も部屋を出た。
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