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 ルカと菱沼たちを乗せたバンがパーキングを出ると、その後をユーリの車が追う。十五分程走ったところで真新しいマンションの地下駐車場に入って行くバンを横目に、ユーリはマンションを通り過ぎ、周辺をぐるりと回って様子を窺った。最近宅地開発された区画らしく、拓けているが閑散としていて、整地された土地のそこかしこに住宅会社の看板がひっそりと佇んでいる。  すっきりとした外観のマンションは、明かりが点いている部屋は数える程で、良く良く見れば「モデルルーム公開中」の横断幕があった。黒とグレーを基調としたシックな風貌と最近完成したばかりの様子からすれば、完全防音だろうと思われる。加えて周囲の家の少なさから、菱沼たちの格好の隠れ家となっているのだろう。 「――――― 親の金でやりたい放題か。良い御身分だねぇ」  ま、おかげでこっちも怪しまれずにルカを待てるけど。  独り言ちて、マンションにほど近い場所に車を停め、折しも明かりが灯ったペントハウスを見上げた。  ーーーーー いいか。ルカの特技は稀有なものだ。その分、時間はかけたがな。そしてユーリ、お前にはあらゆるスキルを身につけさせた。その力でルカを守れ。……お前たちは私の犬だ。よく覚えておけ。  脳裏に蘇った声に思わず舌打ちが漏れる。 「……うるせえよ」  それは、遠い過去に葬ったはずの男の声だった。
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