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翌日。
ユーリは城聖学園大学のキャンパス内にあるカフェテリアにいた。
そもそもが私立の金持ちが集まる大学で、レベルもさほど高くない。行き交う生徒を見ていても、その程度が窺える。流石に食事も豪華で、まさか大学のカフェで本格的なカニクリームコロッケなんぞが食べられるとは思わなかった。しかもかなりの美味。
「ルカに言ったら、羨ましがるだろうな……」
見た目にそぐわず食べるのが好きな相棒を思い出して、テイクアウトできないかと考え始めたところへ、賑やかな一団が入ってくる。どうやら定位置らしい一角に陣取り、大きな声で話し始めた。
大半は女の話。この前の合コンの時の女がどうだったとか、声をかけて来た女がどうだとか。他に話題はないのか、と胸中で毒づきながら目だけでそちらを窺う。良い物を着てはいるようだがいかんせん品が無い。
――――― 一、二、三…六人。あれで全員か?
大きな笑い声が響く。笑い方一つ取っても知性が感じられず、そっと溜息を吐いた。
「一人ですか?」
不意に頭上から降ってきた声にはっとして顔を上げる。いつの間にか目の前に女子大生が二人立っていた。清楚、という言葉からは凡そ無縁そうな姿と、期待するような眼差しがあからさまで、内心げんなりとしながらも笑って頷く。
「うん。そう、一人」
「ご一緒しても良いですか?」
「構わないけど」
勝手に同席しないだけまだましかと思いながら再び頷くと、彼女らは、きゃあ、などと声を上げてユーリの向かいに腰を下ろした。
「どこの学部ですかぁ?」
「ははっ。いくらなんでも学生は無理があるでしょ。カフェテリアのランチが美味いって聞いて、食いに来たの」
「若く見えますよ。それに、もっと年上の人も学生でいますし」
「ああ、そうか。大学は年齢関係ないか。いくつになっても学ぶ意欲があるっていいね」
「お仕事は何ですか? サラリーマンに見えませんけど」
「うん。飲食店、かな」
「えー、行きたい。どこのお店ですか」
「企業秘密」
にっこり笑って口に人差し指を立てれば、彼女たちは残念そうにしながらも嬉しそうに笑った。そこへ、奥の一団から品の無い笑い声が響く。目の前に座る一人が顔を顰めた。
「もう、あいつらウルサイ」
二人共が嫌悪を露わにした顔をするのに、ユーリはそれとなく尋ねる。
「派手だね、彼ら。結構イケメン揃いだけど、もてるんじゃないの」
彼女らは顔を見合わせて身を乗り出すと、声を潜めた。
「この大学内であいつらに嵌るような女子はいないですよ」
「サイテーだもん、あいつら」
「そうなの? 良い物着てるみたいだし、金持ってそうじゃない」
「だってあの態度見たら分かるでしょ。評判悪いんですよ」
「それに良い噂が無いし」
ちらちらと奥の連中を気にしながらも、彼女らはすらすらと喋る。
「噂?」
問い返すと、ぐっと身を乗り出して更に声を潜めた。
「女を食い物にしてる、って」
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