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突然だが、僕は穴にハマっている。
何故か。
それは目の前の彼女に訊いてくれ。
初めて一緒に過ごす冬。
呼び出された僕はデートの誘いだと浮き足立っていた。
待ち合わせは人気のない雑木林。
彼女の姿を見付けて小走りになった僕の世界は一瞬で暗転した。
今、彼女は可愛い顔で僕を見下ろしている。
そんな僕には彼女のスカートの中が丸見えている訳で。
「うふふ♡」
満足気な彼女。
しゃがんで僕に笑いかける。
首から上だけ地面から出ている現状はさしずめ晒し首。
神様、僕は何か罪を犯したのでしょうか。
浮気もせず。
記念日だって忘れず。
彼女のへの贈り物は徹底的にリサーチした。
いつだって彼女は笑っていた筈なのに。
そんな葛藤で悶々としている中、ふわりと頬を風が撫でた。
気付けば僕の首まわりはボルドーに囲まれている。
えっと。
ええっと。
これは、まさか。
「サプライズ♡びっくりした?いつも首元が寒そうだなって思ってたからあげるね♡」
サプライズの方向性が違うとか。
穴に落ちて泥だらけでデート出来ないとか。
プレゼントも地面を引きずってるとか。
色々とツッコミを入れてやりたいところだけど。
「キミに巻いてあげたかったんだけど、身長が足りなかったんだよねぇ」
愛情表現してくれる彼女は愛らしくて。
「だから、巻きやすい高さまで落ちてもらっちゃった☆」
突拍子もない方法を見付けてくる彼女は無邪気で。
「ねぇねぇ、女の子からマフラー貰った時の意味、知ってる?」
「え?」
”キミに首ったけ”
僕を翻弄するキミに、何度だって恋に落とされるんだ。
END
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