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青梅街道を濡らした雨が、ちょうど止んだ頃のことだった。てらてらとまだアスファルトが輝き、泥が跳ねて白いハイソックスを汚した。傘も持たずに歩いていたせいか、長い黒髪はしっとりと濡れ、細い髪の一本一本が束になっている。ようやく厚い雲の渋滞が解消し、冬の星々が煌めいた。黄色い立ち入り禁止のテープが道路を横断し、それと平行に歩道橋が掛かっている。その歩道橋の真ん中に、真っ白な、汚れ一つないマフラーが寂しそうにかかっている。春にさしかかっている冬の空の下、雪のように白いマフラーが風に揺れる。持ち主に置いていかれた、マフラーが揺れている。マフラーが手を伸ばした先には、長い黒髪が鮮血に濡れた、彼女の遺体があった。
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