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「つかさちゃん」
私は柏木さんから離れると、司君の方を向いた。
「私は、どんなつかさちゃんでも『肯定』するよ。だから、選んでよ。自分の進む道」
「…………」
私がまっすぐに見つめると、司君は私のまなざしに耐えられないとでもいうように、視線を反らした。その時、
「司ちゃん……」
蔵の入り口から美乃梨ちゃんの声が聞こえた。ハッとしたように、
「美乃梨、どうしてここに?」
司君が幼馴染の名前を呼ぶ。美乃梨ちゃんは、
「ごめんなさい。この人を連れて来てしまったのは、私なの。司ちゃんが何か思いつめているんじゃないかと思ったら、怖くなって……何かしようとしているのなら、止めようと思って」
と声を震わせながら言った。
「でも、良かった。何事もなくて……」
美乃梨ちゃんは、それこそ、最悪の想像をしていたのかもしれない。瞳を潤ませると、司君に駆け寄り、その体に抱き付いた。
「司ちゃんには、私がいるよ。どんな司ちゃんでも、私は司ちゃんが大好き」
「美乃梨……」
美乃梨ちゃんの名前を呼んだ司君の声が震えていた。
『好き』という言葉以上の肯定があるだろうか。
私は抱き合うふたりを見てそう思った。
(つかさちゃんは、きっともう大丈夫……だよね)
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