6.初めてのデート

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6.初めてのデート

 待ちに待った日曜日。柏木さんとの待ち合わせ場所は、つかさちゃんの時と同じ、四条河原町の百貨店のロビーだった。 「ちょっと早く着きすぎちゃった」  柏木さんとのデートだと思うと、緊張のあまり、30分も早く着いてしまった。  私の今日の装いは、先日つかさちゃんが選んでくれたチェックのスカートに空色のカットソーだ。普段あまり色の付いた服を着ないので、なんだか落ち着かない。 (変じゃないかな……)  人からどう見られているのかと思って、心配になる。 (ちょっと、自意識過剰すぎる?)  もちろん、周囲の人たちは、特段に私に目を向けてはいない。もじもじしている自分に、自分で呆れ、私はそんな気持ちを落ち着かせようと、ハンドバッグからスマホ取り出した。  ハンドバッグには、「今日のお守りがわりに」と、普段はトートバッグにぶら下げている灰色のうさぎのバッグチャームを付け替えて来ている。  私はスマホを操作すると、SNSアプリを起動させた。私自身はまだ一言も投稿出来ていなのだが、タイムラインには、唯一フォローしている柏木さんの投稿が表示されている。柏木さんのアカウント名は「Sou」となっていて、プロフィールには「京都の風景を相棒のぴょん太と一緒に撮影しています。楽しんでいただけますと幸いです」と書いてあった。 「ぴょん太……」  私が作ったうさぎのぬいぐるみは、柏木さんに、ぴょん太という名前を付けてもらったらしい。思わず笑みがこぼれる。  最新の投稿は昨日の日付のもので、夕暮れの鴨川とそれを眺めるぴょん太の写真だった。写真には「今日も良い一日でした」と短い言葉が添えられている。  興味を惹かれてタイムラインを遡ってみると、2、3日おきに、伏見稲荷大社や、金閣寺、竜安寺などの京都の寺社仏閣の写真がアップされていた。同じ場所の写真が続くこともあるので、柏木さんは、写真を撮り溜めて、日を分けて投稿しているのかもしれない。 「へえ、柏木さん、貴船にも行ったことあるんだ。川床料理、美味しそう!」
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