6.初めてのデート

3/23
前へ
/290ページ
次へ
 百貨店を出て、四条河原町の交差点を渡り、四条通を西へと進む。 「あの……市場調査って、どこへ行くのですか?」  迷いなく歩く柏木さんについて行きながら尋ねると、 「ふふっ、内緒です」 との答えが返って来た。 (一体どこに向かっているんだろう?)  柏木さんは御幸町通を北へと曲がると、 「もうすぐですよ」 と行って私を振り向いた。  御幸町通のそれほど広くはない道の両側に、町家を利用した飲食店や古着屋などが立ち並んでいる。私はあまり歩いたことがない通りだったので、物珍しい気持ちで周囲を見回していると、柏木さんは一軒の小さな店の前で立ち止まった。 「ここです」  柏木さんの指し示したのは、白い外壁に木製の扉のついた可愛らしい外観の店だった。一見するとカフェのようにも見えるが、窓越しに店内の様子を伺うと、こまごまとした雑貨が並んでいる。店の前には、『Handmade Shop 青い鳥』と書かれた黒板イーゼルが立てかけられていた。 「入りましょうか」  柏木さんが先に店の中に入ると、扉を押さえて、私を招き入れた。 「わあ……!」  店に入るなり、私は思わず感嘆の声を上げた。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

325人が本棚に入れています
本棚に追加