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私は、今度はキャビネットの前へと移動して、じっくりと中のぬいぐるみ達を見つめた。
マスコット的な雰囲気の羊毛フェルトのぬいぐるみもあれば、本格的なテディベアもある。
テディベアは、私が使用している生地とは全く違う風合いの生地を使っており、見るからに高級感があった。その作家は、動物をデフォルメして可愛らしく制作している私とは対照的に、リアルなデザインのテディベアにわざとくたびれさせたような加工を加え、アンティーク調に仕上げていた。つぶらな瞳に愛嬌がある。鼻や口の刺繍も、耳の位置も完璧で、ありとあらゆる部分のバランスが整っていた。
「すごい……」
(いくらぐらいするんだろう?)
恐る恐る値札を裏返してみると、
(に、二万円!?)
私のぬいぐるみの値段とは比べ物にならない価格が付いていて、私は絶句した。
(高い……けど、このテディベアから、ものすごくこだわりを感じる)
このテディベア作家に敬意を払いながら、キャビネットから離れる。
(柏木さんがここに連れて来てくれたのは、きっと、他のハンドメイド作家さんの作品の値段を参考にしてみたらどうか、っていうことなんだろうな。すごく勉強になる。今日ここに連れて来てもらえて良かった。柏木さんに、お礼を言わないと)
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