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そう思って、いつの間にか私の側からいなくなっていた柏木さんの姿を探すと、彼はレジで何か購入しているところだった。私の視線に気がつくと、柏木さんは振り返り、
「満足されましたか?」
と尋ねた。
「はい、素敵な作品、しっかり拝見させていただきました」
笑顔で答えた後、ふと、彼が何を買っていたのか気になり、
「柏木さんは、何かお買い物されたんですか?」
と問い掛けた。
私の疑問に、柏木さんは、
「はい。心惹かれるものがあったので」
と短く答え、にっこりと笑った。
「柏木さんって、本当に可愛いものがお好きなんですね」
感心したように言うと、柏木さんは、顎に手をやり、
「好き……そう、僕もきっと可愛いものが好きなのでしょうね」
考え込むように言った。
「……?」
柏木さんの歯切れの悪い言葉を不思議に思い、首を傾げていると、私の様子に気が付いたのか、
「何でもありません。さあ行きましょうか。もうとっくにお昼を回っています。そろそろお腹が空いてきたのではありませんか?」
柏木さんはすぐに笑顔に戻ると、私をエスコートするように、店の扉を開けた。
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