14.雨のち晴れ、時々うさぎ日和。

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 それから3日間、私はひどい風邪をひいて寝込んでしまった。『OSAKAクラフトマーケット』の日は、気が張っていて気づかなかったが、司君に監禁された蔵の中が寒くて、体調を崩していたようだ。  その3日間、柏木さんは仕事が終わると、毎日私を見舞いにやって来た。それこそ、うさぎたちに鬱陶しがられるほどに。 「大丈夫ですか?美咲さん。汗はかいていませんか?体を拭きましょうか?」 「い、いえっ!結構です!」  そんなことをされたら、むしろ更に熱が上がってしまう。 「ちょっと、あなた!美咲に触らないでよっ」  白い髪の少女――花が、柏木さんのスーツを引っ張って、私の側から引き離そうとした。 「待って、花ちゃん!その人は美咲さんの恩人だから、乱暴はダメだよ!」  その後ろで、栗色の髪の男の子――桃太郎が、花の服を引っ張っている。 「毎日毎日ここに来て、鬱陶しいったらないわ!」 「まあ、確かにね。僕もちょっと鬱陶しい」  黒髪の少年――雪も腕を組み、じろりと柏木さんを睨んだ。 『…………』  北斗は相変わらずうさぎの姿のまま、ケージの中でじっとして、こちらの様子を見つめている。 「いやはや、何度見ても本当に信じられません。あなたの飼いうさぎたちが、人間に姿を変えられるなんて」  苦笑しながらうさぎたちに視線を向けた柏木さんに、 「うちの子たちが失礼ですみません……」 私は申し訳ない気持ちで謝った。  行方不明になっていた私を探している間、柏木さんは、この子たちが人間に変身することが出来るという秘密を知ってしまったらしい。 「仲良くなりたいのですが……難しいでしょうか」  柏木さんはスーツを引っ張る花を振り返りながら、困った表情を浮かべている。 「は、な、れ、な、さ、い、よっ!」 「花ちゃん、ダメだってば!ねえ、北斗さんも何とか言って」  桃太郎がおろおろしながら北斗に助けを求めたが、北斗は黙ったままだった。 「いつかあなたの家族に受け入れてもらえるよう、頑張ります」  そう宣言した後、柏木さんは私の額に触れると、 「なかなか熱が下がりませんね……」 と言って、そのまま手を滑らせ、頬を撫でた。 「~~~っ」  壊れものを扱うような手つきに、ドキドキする。 (ダメ。こんな風に触れられたら、ますます熱が上がってしまう)  これから先、こんな調子で自分の心臓は保つのだろうか。  私を見つめる柏木さんの優しいまなざしに耐え切れず、私は布団を顔の上まで引き上げた。 *
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