14.雨のち晴れ、時々うさぎ日和。

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 やっと熱が下がり、私はアルバイトに復帰した。と言っても、今日が『風音』の年内最終営業日だ。  今日は小雨が降っているが、空は明るく、今にも止みそうだった。  私が傘を差しながら『風音』に行くと、ちょうど店の中から司君が出てきた。複雑に編み込まれた髪や、化粧、おしゃれな服装は以前のつかさちゃんのままだ。  司君は私の姿に気づくと、ばつの悪そうな顔をした。そして、口を開くと、 「今、店長に、バイト辞めますって言って来た」 と言った。 「えっ!?」  驚いて瞬きをする。 「俺、本気で逃げることにしたんだ。クリスマスに家に帰って来た両親に、自分の気持ちを伝えたんだけど、やっぱり分かってもらえなかったから」 「そうなんだ……」  私は顔を曇らせたが、司君はどこか晴れ晴れとした表情をしている。 「東京に行きたい美容専門学校があるんだ。とりあえず、東京でひとり暮らししようと思ってる」 「つかさちゃんは、そう『選択』したんだね」  私がそう言うと、司君は頷いた。 「つかさちゃんは、やっぱりつかさちゃんなんだね」 「俺、この姿、気に入ってるんだ」  司君の笑顔に釣られて、私も笑顔になった。 「うん、いいと思う」 「じゃあね」  司君は私に手を振ると、歩き出した。手ぶらの司君に声を掛ける。 「傘、貸そうか?」 「いらない。だってもう止んでるよ」  そう言って司君が指差した空には、大きな虹が掛かっていた。 *
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