1.うさぎたちの秘密

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「あの、すみません……」  おずおずと店内に入り声を掛けると、 「こんにちは。こちらへどうぞ」 店員がカウンターの前の椅子を掌で指し示した。  「今日はお部屋をお探しですか?」  そう問われたので、 「あ、えっと、そうではなくて、うさぎを見せてもらおうと……」 私が奥のケージを指さすと、 「ああ!うさぎですか!」 店員は吃驚したように目を見開いた。 「どうぞ、見てください」  店員が腕を伸ばして促したので、 「ありがとうございます」 と礼を言い、うさぎのケージへ近づく。ケージの前に行くと、私は、 (これは……ひどい) と唖然とした。  ケージの中は、碌に掃除がされていないのか、糞尿でひどく汚れていた。うさぎ用のケージではないのか、スノコもない。小さな茶色のうさぎが、尿でびちゃびちゃになったペットシーツの上に座っていた。 (ペットシーツを直置き……。この子が口にしたらどうするの)  キャベツの葉が無造作に入れられており、餌も適当に済まされているのだと思った。
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