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「俺、経営学部の2回生の一色悠馬って言うんだ。君は?」
「文学部の2回生の弥生美咲……です」
「なんだ、同級生じゃん。よろしく!」
一色君は自己紹介をした後、人好きのする笑顔を浮かべた。
(この人……話しやすそう、かも)
にこにこしている一色君は、裏表のない人のような気がして、少し安心する。
「コンビニでハンバーガーを買った時はあったんだよな。その後、どこで落としたんだか」
歩き出した一色君について行きながら、
「その後、どこかへ寄られたんですか?」
と尋ねてみた。彼の足取りを遡れば、財布も見つかるかもしれない。
「図書館行って、学生会館寄ってサークルに顔出して、講義に出て、あとは西側広場で君に会った後、猫に餌をやってたかな」
意外にあちこちと移動している。でも、
「図書館に行ったのだったら、その時はまだ財布はあったのでは?」
学生証がないと図書館には入れない。
「あ、そっか!じゃあ、落としたのはその後か」
なるほど、と一色君が相槌を打つ。とりあえず、まずは学生会館に戻ってみることにした。その道中も、地面に目を向け、財布が落ちていないか探しながら学生会館に向かう。
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