3.猫とトライアングル

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 再び学生会館の前に戻って来ると、私は一色君にお願いをして、会館前の自動販売機で、缶のお汁粉を買ってもらった。 「ほんとにパフェとかでなくてよかったの?お汁粉なんて安すぎだよ」  やや不満そうに唇を尖らせている一色君に向かって首を振る。 「私はこれが好きなんです」  自動販売機で売っているお汁粉は私の大好物。こうしておごってもらえるなんて、ラッキーだ。 「構内でここの自動販売機にしか売っていないんですよ。時々売り切れてることもあるし、こうして飲めるなんてレアなんです」  一色君に笑顔を向けると、 「それって単に人気なくて、補充されてないだけなんじゃ」 彼はぼそりとそう口にした。 「えっ!?そうなんですか!?」  その可能性は、今まで考えたことがなかった。 「こんなに美味しいのに……」  思わずしゅんとすると、一色君が「ぷっ」と噴き出した。 「弥生さんって面白いね。今度俺も飲んでみよっかな、お汁粉」  彼の言葉に、私は「ぜひ!」と大きく頷いた。 (一色君って、本当、話しやすい人だな)  人見知りの私にも気さくに話しかけてくれて、普通に会話が繋がることに、私は感動していた。 (ちょっと、柏木さんと似てる?)  そんなことを考えながら他愛のない話をしていると、講義が終わったのか、隣の校舎からぞろぞろと学生たちが出て来た。
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