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「弥生さん、竜田丼好きなん?私も今日は竜田丼にしてん」
今西さんのトレイの上には、私と同じ食べかけの竜田丼が乗っている。
「はい」
言葉少なに頷くと、
「ジューシーなモモ肉と、甘辛いタレがたまらないやんね。しかも、こんなにおいしいのに安いし」
竜田丼の魅力を熱く語る今西さんに、
「え、えっと……そう、ですね」
戸惑いながら相槌を打つ。
「萌花はいつも竜田丼だよな」
「だって、好きなんやもん」
会話から察するに、どうやらふたりは、よく一緒に昼ご飯を食べているようだ。
「そういえば、弥生さん、何専攻なん?国文?」
「私、日本史学科です」
「あ、史学科やったん?意外。弥生さんって、国文っぽいなって思ったから」
「え、弥生さん、史学科だったんだ」
今西さんが意外そうな表情で頬に手を当て、一色君がなぜか嬉しそうな表情で瞬きをした。
「意外?……そう、かな?」
(国文っぽいって、どんな感じなんだろう?)
よく分からずに口ごもっていると、
「なんか、純文学とか好きそうやなって思って」
今西さんが言い繕うように微笑んだ。
「純文学は、特には……」
「そうなんや」
「…………」
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