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なかなかスムーズに会話が続かない私に、彼女はきっと困っているのだろうなと思ったが、私もどうしていいのか分からず、黙っていると、
「あ、一色じゃん」
聞き覚えのある声が耳に届いた。
名前を呼ばれた一色君と今西さんが声のした方向に顔を向けたので、私もつられてそちらを見ると、
「林先輩!」
映画研究部の林先輩が、笑顔でテーブルに近づいてくるところだった。手に持ったトレイには、一色君と同じローストビーフ丼が乗せられている。
林先輩は今西さんの顔を見ると、
「おっ、萌花ちゃんじゃん。今日も一色と一緒なんだ?」
と、相好を崩した。
「こんにちは。林先輩」
「――と?誰?」
林先輩の視線が今西さんの顔から移動し、私の顔の上で止まる。
「悠馬君の友達の文学部の弥生さんです」
今西さんが私の代わりに説明をしてくれたので、私は軽く会釈をした。
「へえ~……一色の友達、ねぇ」
林先輩は私の顔をじろじろと見た後、今西さんの方を見て、わずかに肩をすくめた。そんな林先輩の様子に、今西さんはすっと視線をそらした。
(……?)
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