3.猫とトライアングル

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「ペルソナ出来ました」  水曜日。鴨川の河川敷で柏木さんを待っていた私は、彼がやって来ると、開口一番にそう言ってノートを差し出した。 「おや、出来たのですね」  柏木さんはメガネの奥の目を細めると、私を誘ってベンチに腰掛ける。今日の柏木さんは、手に緑のビニール袋を提げていて、 「良かったら、冷めないうちに食べませんか?」 と言って、中から三角に包まれた竹の皮の包みを取り出した。 (何だろう?)  紐をほどく彼の手元を見つめていると、包みの中から現れたのは、みたらし団子だった。 「下鴨神社近くのお店のみたらし団子です。先ほど買って来たばかりなので、まだ温かいですよ。どうぞ」  柏木さんは、そう言って1本を私に手渡してくれる。  少し焦げ目の付いたみたらし団子は香ばしく、甘い蜜が何とも言えず美味しい。  私が団子を頬張っている間、柏木さんはノートを見て、考え込むように顎を撫でていた。その真剣な横顔を見て、心臓がドキドキと音を立てる。 (睫毛、長いなぁ……)  思わず見惚れていたら、柏木さんが顔を上げ、私の方を向いた。慌てて視線を反らし、俯く。すると、 「素敵なペルソナだと思いますよ」 柏木さんはノートを差し出しながら、微笑んだ。 「本当ですか!?」  パッと顔をあげて彼を見ると、 「はい。あなたのぬいぐるみを、大切に扱ってくれそうな人物ですね」 ふわりとした笑顔が返って来た。
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