3.猫とトライアングル

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 柏木さんはスーツの内ポケットからスマホを取り出しながら、 「ときに、弥生さん。SNSはやっていますか?」 と問い掛けてきた。私は、 「……やっていません」 と言って首を振る。 「美咲さんの設定したペルソナである都さんは、『ぬい撮り』した写真を、SNSに上げるのが趣味なんですよね。では、美咲さんも、同じようにSNSに上げた方が良いですね。そういった趣味の人は、同じ趣味の人と、繋がりたいと思うはずですから」  柏木さんの提案に、私は表情を曇らせた。SNSは――出来ればしたくはない。 「SNSは個人で物を売る人にとっては、とても便利なツールです。基本無料のアプリですし、そういったものを使えば、費用がかからない上、上手く拡散すれば、かなりの宣伝になりますよ」  『拡散』――その言葉が、過去の古傷を思い出させ、息が苦しくなった。そっと胸を押さえて、視線を伏せる。  けれど、柏木さんはそんな私の様子に気付かず、自分のスマホを私に見せると、 「主に写真を見せるアプリと、短文でつぶやくアプリがありますが……前者はあまり拡散性がないので、僕としては、後者のアプリをお勧めします。更新が苦でなければ、ブログでも良いと思いますよ」 液晶画面に表示されたアプリのアイコンを指し示して説明をした。 「差し支えなければ、今、おすすめのアプリを登録させていただいてもよろしいですか?」  柏木さんが手を差し出したので、私は戸惑いながらもスマホを取り出した。
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