4.美咲と北斗

1/12
前へ
/290ページ
次へ

4.美咲と北斗

 トタン屋根にコンクリートの壁、フェンスで囲まれた小さな小屋。  その中で、30羽のうさぎたちが生活をしていた。  うさぎと同居しているのは、2羽の鶏。  充分な餌を与えられていないうさぎたちは、いつもお腹を空かせていて、同じくお腹を空かせた鶏に、突かれることもあった。  うさぎたちはいつもケガをしていた。ケガをしても、病気をしても、病院に連れて行ってくれる人はいない。  オスとメスは同じ部屋の中へ入れられていたので、頻繁に交尾をして、繁殖をしていた。  子供はたくさん生まれるが、親が育児放棄をしたり、腹を空かせた親に殺されたりして、みんな死んでいく。  充分な掃除の行き届いていない小屋の中は、糞尿で汚れ、悪臭を放っていた。  その為、飼育係の子供たち以外、寄り付こうとしない。  教師は動物飼育に無理解で、状況を改善しようとしない。  ――それは、悪夢だった。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

324人が本棚に入れています
本棚に追加