4.美咲と北斗

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 懐かしい気持ちで飼育小屋を探すと、 「あった!」 昔と同じ場所に、トタン屋根に、コンクリートの壁、フェンスで囲まれた小屋があった。 (あれ?こんなに小さくて古かったっけ……?)  古びた建物は、建て替えた形跡もなく、きっと当時のままなのだろう。けれど、私は、違和感を感じて首をひねった。  もしかすると、思い出の中で、飼育小屋は美化されていたのかもしれない。 (確か、うさぎと鶏がいたはず……)  私は飼育小屋に近づくと、フェンスの中を覗き込んだ。その途端、 「わっ、臭っ!」 ツンと悪臭が鼻をつき、私は思わず声を上げた。見ると中には30羽ほどのうさぎと、2羽の鶏がいて、思い思いの場所にうずくまっていた。私には、小屋の大きさに対して、動物の数が多いように感じられた。小屋の中は糞尿で汚れ不衛生で、水飲み場の水は濁っている。野菜が入れられていたが、土が付いてドロドロだった。 「…………」 (こんな環境……可哀想だよ……)  よく見ると、耳の先がないうさぎや、足を引きずっているうさぎがいる。背中にかさぶたのあるうさぎもいるようだ。私は更にショックを受けた。  昔見たうさぎたちは、こんな感じだっただろうか?もしかすると、子供過ぎて、ここの現実に、気づいていなかったのかもしれない。  悲しい気持ちで小屋の中を見回していると、私は、ある一点に目を留め、 「キャッ!」 と悲鳴を上げた。  部屋の片隅に、いくつかの小さな塊が落ちていた。――それは、数羽の子うさぎだった。見てすぐに、既に息をしていないことが分かった。食いちぎられたのか、足のない子もいる。  私は、パッと目を反らすと、動悸のする胸を押さえ、飼育小屋を離れた。
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