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とにかく、誰か教師にこのことを伝えなければ。
昇降口に戻り、靴を脱ぐと、今度は躊躇わず、勝手に校舎に入った。
朧げな記憶を辿り、職員室を探して行ってみると、室内は電気が点いていた。誰かいることに安堵し、私は扉を開けると、
「すみません……!」
と声を掛けた。
「ん?」
中にいたのは、中年の男性教師だった。見たことのある顔だと思い、一瞬考え込んだが、すぐに、
「八幡先生!」
小学1年の時の担任だと気が付いた。
八幡先生は私の顔を見ると、最初不思議そうな顔をしていたが、次第に思い出してきたのか、
「あーっ!弥生か!弥生美咲!」
私の名前を呼んで破顔した。
「おう、どうした?懐かしいな」
「あ、あの、先生!お久しぶりです!あの、それで、さっき中庭の飼育小屋に行って来たんですけど……」
挨拶もそこそこに、私は中庭で起こっていた出来事を報告した。すると、八幡先生は、
「ああ、うさぎか。子供が死んでいたって?いつものことだ、気にするな。用務員に言って、捨てといてもらうよ」
と、あっさりと言った。
「え」
その言葉に、顔が強張る。
(いつものこと?捨てておく?)
信じられない言葉に、絶句する。
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