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「ケガをしている子もいるみたいでしたけど、病院に連れて行かなくていいんですか……?」
恐る恐る尋ねると、
「病院?そんなの連れて行くわけねぇだろ。誰が金払うんだ?」
八幡先生のさらなる暴言に、私は言葉を失ってしまった。呆然としている私を見て、先生は弱ったように頭を掻くと、
「あのなぁ、うさぎの飼育には、充分な予算が付いていないんだよ。だから金をかけることは出来ない。飼育担当の教師もいるが、知識もないし、子供たちだって適当に世話をしているだけだ。うさぎが死ぬのなんて、日常茶飯事なんだよ」
と溜息をついた。悪びれていないその様子を見て、
「……そんなの……そんなの……ダメですよ……っ」
私の目に涙が浮かんで来た。
(せめて……せめて、ケガをしている子だけでも、病院に連れて行ってあげたい!)
「私が病院に連れて行きます……!飼育小屋のカギを貸してください!」
食ってかかると、八幡先生は面食らったような顔をして、椅子から立ち上がった。
「許可もなく勝手なことは出来ない!」
「一刻を争ったらどうするんですか!?」
私は八幡先生に食い下がった。
「生き物の命の大切さを学ぶ学校で、生き物が苦しめられているなんて、おかしいです!」
正論をぶつけると、私の剣幕に、八幡先生は怯んだようだ。
「動物病院に行きます」
強く主張すると、先生は根負けしたように「やれやれ」と溜息をついた。
先生が一緒に行くという約束で、ケガをしたうさぎを、動物病院に連れて行くことになった。
治療後も、このうさぎを飼育小屋に戻すか否かで、先生と喧々諤々の言い争いをし、最終的に八幡先生が校長に許可を取り、私が引き取ることを許してもらった。
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