4.美咲と北斗

8/12
320人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
 ビラを配り始めてからしばらく経った、ある日のこと。  入学以降、仲良くしていた友達のひとりが、スマホを見せて私に耳打ちしてきた。 「これ美咲のことじゃない?」  友達が見せてくれたSNSには、小学校の前でビラを配る少女の姿が写った写真と、そのビラの内容を写した写真が投稿されていた。写真の少女は横顔だったが、見る人が見れば、それが「弥生美咲」だと分かるものだ。そして、投稿には、「学校の前で、こんなビラを配っている高校生がいる。子供たちにこんなビラを配るなんて、情操教育に悪い。はっきり言って迷惑」との文言が書かれていた。  その投稿は、かなりの数、拡散されており、リプライ欄には、「ビラとか子供にとってはマジ迷惑ですね」「教師も忙しいから世話するの大変なんじゃないですか?」「予算不足なら仕方ないんじゃない?動物より、他に回すところあるだろうし」ありとあらゆる意見が集まっていた。 「え……?」  それを見せられた途端、私は、背中に冷や水を浴びせられたように固まってしまった。自分の行動が、こんな風に否定されるなんて思ってもみなかった。  真っ青になった私に同情したのか、友達は、「あ、でも、肯定的な意見もあるんだよ!『うさぎは外で飼えない動物です。学校飼育は変えるべき!応援します』とか言ってくれてる人もいるよ。ほら!」 そう行って、好意的なリプライを見せてくれたが、ショックを受けていた私の耳には入ってこなかった。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!