4.美咲と北斗

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 高校の中でも、その投稿を見た生徒は多かったようだ。とっくに卒業した小学校の(たかが)うさぎの問題を取沙汰にしている私は、変人だと思われたのか、次第に話しかけてくれる人が少なくなり、私は校内ですっかり浮いた存在になってしまった。  学校には、私の件で、保護者から抗議が来たらしい。SNSを見た人からも、うさぎ飼育に関する真面目な意見や、中には嫌がらせの電話もかかって来るようになり、その対応に追われた教師から、これ以上を問題を大きくしないよう、ビラを配る行為を止めるように、と強く注意をされてしまった。  私に対してあからさまな嫌がらせはなかったが、悪意を向けられている、また他人に迷惑をかけていると思うと、次第に人の目が気になり、私は、他人と会話をすることに恐れを感じるようになって行った。  ただ、うさぎたちのことばかりが気がかりだったが、もはや何をする勇気も持てなくなってしまった自分が情けなかった。  そんな時、八幡先生から、家に、 「今度小学校で、飼育動物の環境改善をすることになった。今後は獣医師とも連携して、うさぎの飼育方法を周知し、病気やケガについても、出来るだけ対処をしていく」 という電話が掛かって来た。SNSの投稿を見た人からの反響が大きく、小学校も動かざるを得なくなったらしい。 (良かった!これでうさぎたちが助かる)  ほっと胸を撫で下ろしていると、八幡先生は冷たい声音で、 「弥生。周りの人に散々迷惑をかけた結果、自分の思い通りになって満足したか?」 嫌味がましく、そう言った――。 *
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