5.踊る指先

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(柏木さんとデート……どうしよう、何を着ていけばいいんだろう……)  柏木さんと別れ、アルバイトに向かったものの、アルバイト中、私の頭の中は、来週の日曜日のことでいっぱいだった。 「あの、すみません。これ、注文したものと違うんですけど……」  客に声を掛けられ、ハッと我に返った。慌てて伝票を確認すると、チーズケーキと抹茶ムースを間違えて提供してしまっている。 「申し訳ありません。すぐにお取替え致します……!」  慌ててチーズケーキを運び、抹茶ムースを下げた私に、 「美咲さん、どうしたんですかぁ?今日はなんだかおかしいですよぉ?」 つかさちゃんが小首を傾げて問い掛けて来た。 「あ、えっと、何でもないよ」  誤魔化すように笑顔を浮かべ、首を振る。  今日のつかさちゃんは、ドット柄の黒のワイドパンツに、アシンメトリーな襟元のカットソーを合わせている。 (今日もお洒落) 「つかさちゃんって、いつも可愛い服着てるね」  感心して褒めると、つかさちゃんはぱちぱちと目を瞬いた。 「急にどうしたんですかぁ?美咲さんって服とか興味なさそうなのにぃ~」 「興味がないわけじゃないけど……」  ただ、どんな服を買っていいのか分らないのだ。 「ええ~?美咲さんの服って、いつも黒か白かベージュじゃないですかぁ?地味ですよぉ」  つかさちゃんは、相変わらずさらりとひどいことを言う。地味と言われ、私は情けない気持ちで苦笑した。 「そう?」  すると、つかさちゃんは、唇に指をあててしばらく考え込んだ後、 「じゃあ、あたし、美咲さんの改造計画しよっかな」 といたずらっぽく微笑んだ。 「美咲さん、今週の土曜日、学校もバイトも休みですよね?」  つかさちゃんの言葉に頷くと、 「店長ぉ~、あたし、土曜日のシフト休みまーす」 彼女は 厨房にいる皐月さんに向かって、やおら、叫んだ。 「えっ!?急に何?」  皐月さんが驚いたように、カウンターから顔を出す。 「つかさちゃん、勝手に決めないで」 「母方の叔母の姪の子供が急病で入院したので、お見舞いに行かないといけなくなってぇ~」 「それもうほとんど他人よね」  つかさちゃんの見え透いた嘘に皐月さんが半眼になった。  けれどつかさちゃんは、のらりくらりと理由を述べ、結局、最終的に休みをもぎ取ると、私に向かってこっそりとウィンクをした。 *
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